Kawatana no mori Event Archives
2017年4月3日
photo : Kouji Hamabe
2年前の初登場で絶賛を博したオリヴィエ・シャルリエ氏が、名ピアニストで名教授、日本をこよなく愛するピエール・レアク氏との共演で再登場。リピーターの期待を素晴らしい形で裏切ってくれた、メインプログラム「フランク作曲ヴァイオリン・ソナタ」に、会場の全員が痺れました。作品を熟知したレアク氏のピアノで魂が解放されたかのようなシャルリエ氏の演奏は、2年前とは全く別のヴァイオリニストのそれを聴いている様でした。レアク氏の特に豊かな低音が魅力のとてもパワフルで自由な演奏スタイルに、河合楽器製作所が世界に誇る名器SK-EXがしっかりとその真価で応え、室内楽による夢のような熱狂の夜となりました。
終演後、お二人がコメントを残されました。全文ここに掲載致します。(通訳:下川真樹|編集:増田玲子)
今回2度目の川棚来訪と音楽祭出演だが、初回が素晴らしい思い出だったので2回目が実現して嬉しい。川棚・コルトー音楽祭に出演したことがある音楽仲間(京都フランス音楽アカデミーの招聘教授)がみんな川棚の良い噂をしていて、音楽家にとっては何か「魔法の地」のような存在。
この地に来ると、海、山、自然や、コルトーの胸像など、この地の風景を実際に見て肌でここを感じながら、私はコルトーに思いを馳せる。忘れられかけていた記憶を(コルトーホールや胸像を作ったり音楽祭を開催したりという活動で)呼び起こしている人びとの行動が素晴らしい。それはいわば、音楽史上に残っている“コルトー”というただの名前の響きだけだったものを生き返らせるようなもの。私にとって、偉大な音楽家という名前だけの存在だったコルトーが、川棚の地を通じて、コルトーの人生を想像し、人となりや彼の感情などを知ることが出来た。川棚のおかげで、コルトーをよりよく知ることが出来た。
川棚の人々の温かいおもてなしがうれしく、コルトーの思い出をよりどころとする家族のような気持になる。コルトーホールは建物自体がとてもオリジナルで、みんなが包み込まれる雰囲気。コンサートの聴衆はとても繊細に集中して耳を傾けてくれたのがうれしかった。もし3度目のチャンスがあれば、また喜んで戻ってきたい。[オリヴィエ・シャルリエ]
コルトーホールに来ることができて心から光栄に思います。あたたかいおもてなしがとても嬉しく、喜びを感じます。京都でのアカデミーを大成功のうちに終えた後に、今回の来日の最後の演奏会としてここで演奏できたことも特別な嬉しさがあります。私はこれまで22回来日しており、日本が大好きです。
川棚の聴衆についての印象は、すごく集中して聴いてくれているのが、演奏中によく分かりました。今回のとても短い滞在の中で、コルトーが愛した孤留島(厚島)を見て、ここが本当に素晴らしい場所だとわかりました。美しい場所です。[ピエール・レアク]
オリヴィエ・シャルリエ Olivier Charlier ヴァイオリン
熟達した技法と独特の存在感で、今や輝かしい円熟期を迎えるヴァイオリニスト。10歳でパリ国立高等音楽院に入学しナディア・ブーランジェ、ユーディ・メニューインらに師事。若くしてミュンヘン、ロン=ティボー等の国際コンクールで次々に受賞を重ねる。以来30年以上、世界中で演奏活動を行う。多数の協奏曲の名曲をレパートリーに数える一方、知られざる作曲家の作品も積極的に演奏・録音。室内楽にも熱心で、ラ・ロック・ダンテロン、プラード・カザルス、モンペリエ、ラ・フォル・ジュルネ等、多くの音楽祭に定期的に参加。ドゥカンやユボーら自身の師たちに続き、パリ国立高等音楽院にて教鞭をとる。使用楽器は1747年製カルロ・ベルゴンツィ。
photo : Manabu Hieda
ピエール・レアク Pierre Réach ピアノ
各地で演奏会やマスタークラスを行い、ピアノ・ピックフェスティバル(フランス)やヴィラセカフェスティバル(スペイン)の創設者兼ディレクターとしても活躍。オリヴィエ・メシアンコンクール第1位、自身の師の名を冠したアルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール入賞などの受賞歴を持つ一方、Y.ルフェビュール、Y.ロリオ、P.B.=スコダ等のもとで研鑽を積んだ。多くの著名オーケストラと共演、室内楽ではG.ホフマン、G.プーレ、P.アモイヤル等と共演。バッハ「ゴルトベルク変奏曲」の演奏は高く評価され多数のCDを録音。現在パリ地方音楽院およびカタルーニャ高等音楽院教授、上海音楽学院名誉教授。15年フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。
photo : Kouji Hamabe
日時 2017. 4.3 Mon. 19:15開演(18:45開場)
会場 川棚の杜・コルトーホール
出演 オリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン)Olivier Charlier, violin
ピエール・レアク(ピアノ)Pierre Réach, piano
曲目 F.シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番
ニ長調 D384 op.137-1
J.ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 op.10
C.フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
photo : Manabu Hieda